価値観が変わるバイク。
そういって過言ではないマシンが、VINS Duecinquantaです。
多くのモーターサイクル関係媒体に、試乗記事が登場しているVINS。一切の忖度なし(何しろこの車両のために当社が広告だしてお金で書いていただく、なんてことはできませんからね)、文字通りこのマシンを見て乗ったことが書かれている、限りなくピュアなインプレッションが散見されています。
だれもが口をそろえるのが、この時代に、最新型の2サイクルマシンに乗れるなんて。そして、乗ったとたんにあの興奮がよみがえるとともに、パワフルなのに乗りにくくない気持ちよさに感動していきます。マシンから離れたとたんに、またマシンに戻ってもう一度お気に入りのワインディングに乗り出したくなってしまうほどに、奥が深く楽しい。そんなモーターサイクル、あったでしょうか。
排気量のヒエラルキーからも完全に解き放たれた250㏄。でかければ偉い、はもう過去のものです。日本では車検のない「軽二輪」に相当する普通免許で乗れてしまう排気量ですから軽く見られがち。
でも、VINSはそんなヒエラルキーをはるかに超越したところにあるマシンです。モーターサイクルとして、技術として、つくりからして、思想までも。

そもそも、現代にあって、たとえ小さなメーカーとはいえ、いや小さなメーカーだからこそ、自らエンジンをゼロから設計し、フレームもまた完全な白紙から作りこみ、1台のモーターサイクルを完成させたことがあったでしょうか。それも、たった一人の人物が、すべてを自らの手で生み出すなんて。VINS Duecinquantaはそうしたマシンなのです。

VINSを主宰するVincenzo Mattaと筆者は、私たちをつなげてくれたドイツ人ジャーナリスト、Klaus Nennevitzに紹介されて以来、深くコミュニケーションをとり続けてきました。Vincenzoの自ら生み出したマシンにかける執念とその創作への思想に深く共鳴し、彼が作るマシンをこの手で操り、日本のお客さまの手に渡していきたい、と筆者は考え、その日を待ち続けてきたのです。
かつて、ニュージーランドの鬼才・ジョン=ブリッテンが車体からエンジンまでのほとんどの部品をオリジナルで製作したマシン、ブリッテンV1000を生み出しました。日本にそのブリッテンが持ち込まれ、レースを走らせた時、間近に張り付いて食い入るようにマシンを観察したことを今も覚えています。
Britten V1000
その時、ビューエルで理想のマシンを作り出そう、と夢中になって議論したのもまた、他にはないオリジナルのシャシーを作り出すことが理想の実現には必要だったからでした(ビューエルはエンジンこそハーレーを範とすることが決定づけられていましたが、その縛りとあのエンジンのキャラクターがあったからこそ成功した側面も否定できないはずです)。理想のモーターサイクルを作り出す。そこには、ビルダーの確固たる思想が必要です。
ありものを改造するのではなく、ゼロから作り出したマシンが、自分の思想に従って設計され、理想のハンドリングを実現する、そうした筋の通ったマシンづくりはいったい何人のビルダーが本当に実現できたのでしょうか。
VINSは、まさにそうした、すべてを自らの手で生み出し、誕生させたマニファクチャラなのです。
VINSはまず、その心臓部となるエンジンを生み出し、Langenに供給することで資金を手当てしました。VINS Duecinquantaというマシンを実現するための資金作りの始まりは、そのエンジンの外販からスタートしていたのです。
| Langen 2 Stroke(ランゲン ツーストローク)
もちろんエンジンの販売だけではなく、VINS SRL社の収益はエンジニアリング会社として技術を売り、またオートクレーブを持つカーボン製部品製作・設計者として多くのスポーツカー向けの部品や用品を生み出し、あるいはマシニングを持つアルミニウム部品設計切削者として商品を企画販売することによって、安定した収益を生み出してきた会社でもありました。こうした事業を柱に据えていたからこそ、モーターサイクル(完成車)については、じっくりと腰を据えての徹底した理想を追い求めた開発へとつながっていったわけでもあるのです。
それを理解したうえでやってきた試乗の機会。VINSを訪問し、Vincenzoとじっくりと話をしながら互いに理解を深め、ようやくそこで乗る機会が与えられる(かもしれない)のが、VINSに乗る唯一の方法でした。
| VINS Duecinquanta
そのVINSが日本に届けられ、乗って理解を深めてくれ、俺たちにもう言葉はいらないだろう、という状態になったのです。世界で唯一、VINSがイタリアを離れ、他人の手に委ねられて自由な試乗機会が与えられる。こんな奇跡があるでしょうか。Vincenzoはその文字通りの奇跡を提供してくれたのです。
試乗会に先立ち、筆者は興奮を隠せませんでした。まずは、木箱に入れられたVINSが日本に到着。箱を分解し、マシンが目の前に登場します。車両そのものはヨーロッパで一度、直接目にしていたものですが、改めて触ることができるマシンがここにある、というのは感慨深いものです。その後、書類作業などがありようやくナンバーが取得できたのが約2週間後。その間各部を点検し、バッテリーをつなぎ、燃料を入れ、いよいよ始動しました。
| VINS Duecinquanta
2サイクル独特のサウンドが、しかし250㏄とは思えない重厚な排気音とともに響き渡ります。これがVINSか、、、暖気を済ませると、まずは早速テストに出かけました。ストリートマシンとして作られているはずですから、会社の前の国道からスタートして普通に走れなくてはお客さまに紹介できません。とはいえ知れば知るほどにレーシングマシン以上のこのモデル、本当に酷暑の東京にいきなり乗り出していいのだろうか。と心配しつつ、クラッチをつなぎました。
想像をはるかに超えたトルクと、軽量な車体のおかげでエンストする気配もないままにするすると走り出しました。ホサック式フロントサスペンションは意外なほど初期が柔らかく、バンピーな国道のギャップを丁寧に拾います。
信号に引っ掛かってもエンストしたり調子が悪くなる気配もなく、特別な対応を必要としないある意味普通のモーターサイクルです。ただ、驚くほど軽いことと、やる気にあふれた排気音が、アクセルをひねる右手を駆り立てます。いや、マシンがというよりは、筆者自身が、早くアクセルを開けたい、パワーを開放してそのトルクと音を味わいたい、と心が逸ります。でも街中ですからね、そうもいきません。
いつものテストコースは、緩やかなカーブのある川沿いの気持ちのいいストリート。ここまでくれば信号もなく、見通しもよく、気分良くスロットルを開けて行くことができます。
気持ちいい!ちょっと高めのギアからでもストレスなく加速していきますが、やはり低いギアを選んでパワーバンドに入れていくと恐ろしいほどのダッシュ力を発揮します。たちまちフロントが軽くなる力を持ちながらも、比較的長いホイールベースが走行に安定感を与えてくれます。それでいながら、立ち気味のキャスターアングルのせいか倒し込みも極めてクイックで、街中の小さなコーナーでさえ曲がるのがひたすら楽しくてニヤついてしまいます。なんてバイクなんだ!
街中でも十分走らせられることを確信した次が、箱根で実施した試乗会でした。
箱根ではさらに好印象に変わって行きます。ギャンギャン走るというよりは、むしろ高めのギアでワインディングを流しながら走り、ワイドなトルクを生かしながらアクセルとひねって立ち上がっていく快感。大人のコーナリングマシンです。フロントはプリダイブ+アンチダイブのセッティングが可能ですから、不必要な沈み込みを解消しつつ、よく動いて不安なくワインディングをいなします。リアサスペンションの接地感も秀逸で、パワーが確実にタイヤを通じて路面をとらえる感覚はまるでマシンを完全に理解して走らせているかのような快感に浸らせてくれます。
このところオフロードバイクやスクランブラーばかり乗ってきた筆者には強烈なフロントブレーキは、使うほどに安心感を与えてくれ、ライディングアベレージが自然と上がっていくのを助けてくれます。好みを言えばもうちょっと柔らかいタイヤで楽しみたいところですが、これは賛否両論あるところかもしれません。それにしても、ツースト、楽しい!
80-90年代のレーサーレプリカ全盛期の2サイクルエンジンを搭載した同じ250㏄のスポーツバイクを経験した方でも、この乗り味とエンジンはちょっと想像できないところにあったかと思います。2ストとは思えないほど中間がリッチでトルクに乗せて加速していく様は、まるで300㏄の2サイクルエンデューロマシンのようです。それが高回転まで続く一方で、アクセルを大きくひねればじゃじゃ馬のように駆け出すパワーを秘めているわけです。フロントの剛性感が高いから安心して前に荷重を預けて行くことができ、それが強い旋回力へとつながっていきます。走り、曲がり、止まる。すべてが楽しいスーパーマシンなのです。
高価なプライスタグばかりが独り歩きしがちですが、ハイブランドのスーパーバイクはすでに300-500万円台の価格が見えてきている時代です。そこにVINSが持つキャラクターを仕掛けていくと到底この値段では作りこめないことは誰にでも簡単に想像できると思います。エンジンと車体のすべてがオリジナルであり、すなわち世の中のいかなるモーターサイクルをもってしてもこれと同じマシンに出会えることはありません。クイックファスナーだけで止められているアウターフェアリングは簡単に取り外しができ、その下には一般のモーターサイクルのフレームに相当するモノコックが控えています。
エンジンはストレスメンバーではありませんから極めて軽量。モノコックは徹底的に空力を考えて設計されていますから、フロント両サイドのエアスクープはダイレクトにラジエーターを冷やし、通過する空気はそのままモノコックを通ってシート下に作られた負圧になる空間から吸い出され、極めて高効率なエアの流れを生み出しています。
このためラジエーターもエンジンのサイズとパワーからは想像できないほど小型に収まっています。フォーミュラカーの様にレイアウトされたリアショックユニットのおかげでできた空間を使って、チャンバーはほぼストレート形状で設計され、高出力にも貢献しています。
まったく新しい考え方で設計されたエンジンは、空気、燃料、オイルを完全に分離してそれを制御して要求するという発想。リードバルブが提供するのはあくまでも空気だけであり、その周辺にチャネル構造で設けられたオイル吐出口から回転数に応じて適切にオイルを吐出します。ガソリンを噴射するインジェクターはリードバルブブロックの中央に独立して位置しているため、これも狙った時に狙った量だけを正確に噴射し、霧化させていきます。
VINSがEURO5をクリアするほどに、2サイクルとは思えないほどエミッションがよいのはこの手によるところです。同時に燃費もよく、おおむね16km/L は走りますから、この種のスーパースポーツとは思えないほどといってもいいでしょう。
車体もエンジンもすべてが画期的でありながら、単なる技術のショーケースではなく、目的のために生み出されてきた技術を提供して形に変えている、それがVINSなのです。どうです?決して高いだけのファンシーな商品ではないことが見えてきましたでしょうか。
実際、マシンの造りを考え、オリジナルのエンジンを作り出したことを考えて行くと、むしろこの価格でやれるんだという驚きの方が先行するくらいです。ある意味、本当に自分で作っているから実現できた価格とも言えますね。
何よりもこの時代に2サイクルエンジンで走りを楽しもうという心意気に乾杯したいじゃありませんか。そして、乗れば間違いなく掛け値なしに楽しい。そこに投資する価値を見出してくださるお客さまも、確実にいらっしゃいます。価値がわかって投下できる資金があるって素晴らしいですね。うらやましい。。。

VINSがいつまでモータリストにあるかはわかりませんが、気になる人は是非見に来ていただきたいです。そして、出来れば乗る機会を作りたいですよね。もちろん誰にでもお乗りいただけるわけではありませんが、、、サーキットイベントなんかに持ち込める機会があったらそれも楽しいだろうなぁ。
というお話を、ぜひモータリスト・カフェでじっくりしにいらっしゃいませんか。お待ちしております。
| 特設サイト「VINS × Langen | 伝説の2ストローク、日本上陸」
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