のぐコラ#14 ミナレッリってどんな会社?

Motori Minarelli| Motori Minarelli

ファンティックは今、すべてのモデルをイタリアで生産している、フルラインメーカーとしては事実上欧州でも唯一のブランドです(オフロード専業メーカーなどを除く)。ファンティックの自慢は、お客さまにご満足いただける品質とサポートをお届けするために、すべてのファンティックをイタリアの自社工場で製造しているということ。Motori Minarelli
| Motori Minarelli Caballero700 Scrambler製造ライン
その製造工場の中核となるのが、ファンティックのグループ会社でもあるモトーリ=ミナレッリになります。ファンティック本社から列車で2時間ほどの町、ボローニャにあるミナレッリ社を訪問した様子を紹介させていただきながら、なぜファンティックがこの会社を子会社にしたのか、そして今ミナレッリはどんな役割を果たしているのかをご覧いただきましょう。

<モトーリ=ミナレッリとは>
General Director of Motori Minarelli: Vittorino Filippas
| General Director of Motori Minarelli: Vittorino Filippas
1951年、ヴィットーリオ=ミナレッリとフランコ=モリーニの二人が北イタリア・ボローニャに創立したバイクメーカーです。その後モペッドの製造にも乗り出し、1956年には2サイクルエンジンのオリジナルモデルを送り出すとともに工場を拡張、欧州の多くのメーカーのエンジンとして採用されていきました。1970年代にはエンジンの製造台数が25万台を超え、自ら製造したレーシングマシンが125㏄世界グランプリで勝利を飾るなど、その技術力は高く評価されていきます。Motori Minarelli
| 1978年から1981年。125cc世界選手権でメーカータイトルを4回、ライダータイトルを2回獲得。

欧州での販売拡大を目指すヤマハがミナレッリの能力に注目したのは90年代に入ってから。やがてヤマハはスクーターや125㏄4サイクルエンジンの製造も委託するようになり、2002年にはついに完全子会社化を行います。ヤマハの欧州での重要な製造拠点となったミナレッリはエンジンの製造台数も45万台を超えるまでに成長しましたが、ヤマハの経営不振、ブラジルやインドネシアでのヤマハの工場の生産の活発化とコストダウンもあって、2020年、ヤマハの手を離れ、ファンティック・モーターの傘下に入ることとなりました。

モトーリ=ミナレッリは、ファンティックのグループ会社になった今でもヤマハはもちろん、ベータやシェルコなど、多くのオートバイメーカーにオリジナル・エンジンの供給を続けているエンジン・サプライヤーです。同時に、ファンティックの製造拠点として、完成車の生産も行う企業となっています。Motori Minarelli
| Motori Minarelli社が設計・製造を行う新型エンジンMM460
エンジンについては、ファンティックが誇るエンデューロモデル『XE300』向けの300㏄2サイクルエンジンを開発・製造するほか、新しいキャバレロ・シリーズやストリートモデルであるステルスに向けた4サイクルDOHCエンジンの製造、ファンティックが活躍するMOTO2やMXGP向けのエンジン・チューニングも行っています。

<工場訪問記>
ミナレッリの工場を訪問しながら、ファクトリー・マネージャーに多くの質問をぶつけました。
左からAlessandro Barbieri (Minarelli Plant Manager) / Chiara Punzo (Minarelli Marketing Manager)
Ermanno Ventura (Minarelli Sales Manager) / Andrea Benatti (Fantic Export Manager)

Q:ここ(モトーリ=ミナレッリ)では、エンジンだけではなく車体も製造しているんですか?

A:はい。敷地内にエンジン専用工場と、車体組み立て工場とを別々に用意し、それぞれで作業を行っています。車両の製造を行うこと、がファンティックによる買収の大きな目的でもあったのです。ファンティックの自社工場はすでにキャパシティの限界を迎えていて、新しいラインアップの生産には工場を新設する必要に迫られていました。トレヴィーソ(北イタリア、ヴェネツィアにほど近いファンティック創業以来の本社工場)では車体組み立てラインは1本でしたからね。ミナレッリでは車体の組み立てラインは5本に増え、ストリートモデルからモトクロッサーまで、すべてのラインアップを組み立てることができる理想的な製造環境を築き上げることができたのです。

Q:ヤマハが親会社だった時代も20年ほど続いたわけですが、そこでは何が得られたのでしょうか?

A:ヤマハは日本のメーカーならではのシステム、例えばジャスト・イン・タイムやカイゼン、といったヨーロッパでは一般的ではなかった製造プロセスや工程を持っていました。これを丁寧に時間をかけ導入し、ミナレッリは完全に身に着けていて、イタリア企業とは思えないほど合理的かつ高品質のモーターサイクル製造が可能になっています。これを既存のイタリア企業に導入するのは容易ではありません。ファンティックは、ミナレッリをグループ化することでこうした仕組みを一挙に手にすることができました。ヤマハが残した5S=整理、整頓、清掃、清潔、しつけもミナレッリの中に深く刻み込まれています。これはファンティックのマネジメントにも強い影響を与えています。今、ミナレッリのスタッフはヤマハ自体から減ることなく、イタリアン・カンパニーであることに誇りを抱きながらも、ヤマハによって培わせた合理的で緻密な企業としての道を改めて歩んでいます。これはファンティックにとって非常に大きな力となっているのです。
ミナレッリのオーナーとなることで、ファンティックはミナレッリがはぐぐんできた経験、歴史、能力を受け継ぐことができました。一方で、これ自体はヤマハとの決別を意味しているものでもありません。ヤマハは今もなお、ミナレッリにとって重要な顧客であり、またファンティックにとっても需要なサプライヤーでもあります。そう、私たちはヤマハにエンジンを売っていますが、ヤマハからエンジンを買ってもいるわけですからね。
事実、工場内には今も欧州ヤマハに向けた車両の企画、開発、製造を担当するスタッフがいます。ヤマハとの関係は深く、また素晴らしいものと考えているのです。

Q:ヤマハのすべてがミナレッリに好影響を残しているわけでもないと思います。ネガティブな影響は今も感じられますか?

A:ヤマハは日本の企業ならではの文化をもたらしました。洗練された構造化、詳細で明確なプロセス、継続的な自主点検。工場の信頼性を上げることに優れ、その分かは今もミナレッリ、そしてファンティックにも好影響を与えています。一方で、同じことがいくつかの欠点にもなりえます。例えば堅牢なプロセスだからこそ、柔軟性に欠けています。だからプロセスの変更が必要な時などは非常に時間がかかります。見切り発車はもちろんでき間遠視、時間をかけて検討を重ね、ようやく試験が行われ、変更が承認されます。例外の発生も認められず、また例外が発生するようなことへの管理コストを厳しく監督されます。ところが、現実世界はもっと柔軟に対応しなくてはいけないことがたくさんあります。決められたものを決められたプロセスに則って生産しているだけに見える工場でさえ、実際には予期しない外的要因によって対応すべきことが発生するのです。
ミナレッリはファンティックと融合することによって、日本とイタリアという全く異なる、しかし同じゴールを見ている二つの工業メーカーが持つ長所を伸ばしあうことができるようになりました。ファンティックがより俯瞰的に物事をとらえ、柔軟性に富み、ダイナミックに動ける一方、ミナレッリに根付いた日本的な低コスト、丁寧さや確実さが融合することで、今後ほかの誰と競い合っても引けを取ることのない新しい企業文化を身に着けることができたのです。

Q:ヤマハとファンティックの大きな違いは何でしょうか?

A:一番の長所といえる違いは、スピードですね。それから柔軟性。改善に向けたスピードは圧倒的に早くなりました。もちろん互いにイタリア語で理解しあうことができるというのも実際には利点でもあります。ただそれだけではなく、ファンティックは小回りの利く、生産台数の少ないメーカーだからこそ、市場に近いところにいつもいて、市場からの声を吸い上げ、すぐにそれを商品開発に反映させることができるという特徴を持っています。ヤマハ時代、ミナレッリは市場の声とは遠く離れたところにいました。エンジンの生産拠点として集中され、車両の組み立てはフランスのMBKが担っていたため、ミナレッリには市場の声は届かなかったのです。今、ファンティックはきわめて市場に近いビジネスを行い、ダイレクトに市場の声をフィードバックしてきます。もちろん、ミナレッリに対してもです。商品の改善はもちろん、将来の商品企画、プロセスの変更など、ダイナミックに市場要求にこたえていくためにも、これは非常に良い、かつ大きな変化だと思います。
もちろん、今もなおヤマハとの関係は良好です。ミナレッリとしては、ヤマハの工程のノウハウや経験にファンティックのダイナミックさ、柔軟さが加わった今、成長に向けた大きなポテンシャルを得ていると感じているのです。

Q:今後の成長はどのように進むと考えていますか?

A:ファンティックにとっては、大きな飛躍、成長の機会を得たものと考えています。生産キャパシティは大幅に増加しましたし、今後ますます広がっていくものと考えています。新型のエンジン(MM460)はファンティックのための専用エンジンとして設計されここミナレッリで製造されるものですが、こうした専用機の設計、製造、開発が進むことはファンティックの成長には欠かせないものと考えています。Scambler500 | STEALTH500
| MM460エンジンを搭載する、Scambler500 / STEALTH500
一方でミナレッリはヨーロッパのエンジン工場として従来果たしてきた役割を今後も続けていきます。ヤマハはもちろん、多くの欧州の小メーカーにエンジンを供給し続け、新しいエンジンを提供していきます。供給先も今後もさらに広がって行くことと確信しています。

caballero.jp
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