キャバレロ・エボリューション
ファンティックが新しく導入した460㏄の新型エンジンを搭載するキャバレロ・シリーズ。7年目にして初めてフルモデルチェンジを行ったキャバレロの実力を、世界のモーターサイクル界のあらゆる側面において、比類なき豊富な経験を持つ国際ジャーナリストのKlaus Nennewitz(クラウス・ネネヴィッツ)氏が鋭くえぐります。

| Caballero500 Scrambler / Motorcycle journalist:Klaus Nennewitz
ストーリー
スクランブラーはオフロードモデルが登場するまでの間、自由を謳歌するライダーたちのアイコンであり、特に1950-60年代のアメリカで隆盛を誇ったモデルだ。とりわけアメリカ西部の原野や砂漠で、オフロード・タイヤを装着し、マフラーを引き上げて、マッドガードを取り付ける。そうすれば簡単にそうした冒険に分け入ることができ、夢をかなえてくれる道具だったのだ。
当時免許を持たない14歳の若者でも乗れるように設計された50ccの「ボーイズ・スクランブラー」として、1969年のミラノショーで発表されたFantic Caballero TX9
ファンティックは1969年にはこうしたスタイルをキャバレロ50でヨーロッパに導入したブランドである。その後の紆余曲折を経てファンティックが2014年に再生すると、2016年には最初の新しいキャバレロが登場。続いて125,250,500㏄へとラインアップを拡大して、イタリアはベネト州にあるこのブランドの魅力を引き立てる役割を担ってきたのが、今に至るキャバレロ・シリーズである。だが競合も増え、とりわけスタイルは中国からの安価な刺客に真似られ、またEURO-5+という新しい環境規制への対応も迫る中、ついにそのラインアップをオーバーホールする必要に迫られたのだ。
モデルチェンジのために、エンジンは2021年にファンティック帝国の一員となったボローニャにほど近いモトーリ=ミナレッリが設計することになった。もちろん、このエンジンの製造もミナレッリが担うことになる。
Motori Minarelli社が設計・製造を行う新型エンジンMM460
新型エンジンは2本のオーバーヘッド・カムシャフトを備え、燃焼を改善するとともに最高出力を8,000回転時に44HP発揮する、旧型と比較して6hpもの出力向上を得ることとなった。最大トルクも2Nmほど高まり、最大42Nmを7,000回転で発揮する。ライド・バイ・ワイヤ―を採用し、「ストリート」と「オール・テレイン」の2つのモードを選択できるようになったエンジンマネジメント。
オール・テレイン・モードはABSのキャンセルも可能にしている。だがトラクションコントロールは用意せず、エンジンパワーを存分に使いこなせる仕様だ。出力の向上に合わせ、エンジン温度を安定すべく新たにオイル・クーラーも追加されている。
オフロード性能の向上を目的に、「ラリー」モデルはフロントホイールに21インチを採用した。リアは17インチのままである。
| Caballero500 Rally
フルアジャスタブルの倒立式43㎜系のフロントフォークと、同じくフルアジャスタブルのリアショックユニットはそれぞれ200㎜のホイールトラベルを誇っている。ハンドルバーの高さも引き上げられた新型Rallyは、これまで以上のオフロード走破性を得たうえに、マラソン・レイドでも楽しめる仕様となったといえるだろう。
新型のエキゾーストシステムは、これまでのモデルよりも右側への張り出しが控えめになりポジションが改善。スタンディング・ポジションでのライディングがさらにやりやすくなったといえる。一方、燃料タンクはこれまでと変わらず、LEDの灯火類もスタイルを変更させつつオリジナル装備品として用意されている。細かなパーツの基本は新型エンジンとフレームの登場に伴ってアップデートされている。
新型のシートの快適性は、座ればすぐにわかるレベルで特筆すべき美点の一つだ。高反発性の素材を用いた新型シートはかつてのようなコシがないまでの柔らかさはない。だが、ライダーとマシンとをつなぐ存在であるシートはマシンの操作感を向上させ、とりわけ長距離の走行では快適に感じられるはずだ。
シート高はRallyで860㎜と高いが、視界の良さも高い評価ポイントである。ハンドルバーはキャバレロ700より幅が狭く、扱いやすい。ミラーは簡単に可倒できる優れものだ。
MM460エンジンは、これまでとは比較できないほど洗練された。雑味のないノイズ、アルミ製シフトレバーによるしっかりとしたギアタッチ、簡単に出るニュートラル。
試乗車に用意されていたタイヤはピレリ・スコーピオン・ラリーSTRだが、倒しこみは軽く、しかしこの単気筒エンジンにはやや剛性が勝ち気味といっていいだろう。
エアボックスから発する吸気音がフルスロットルを与えるとややノイジーで、それだけに低回転域での鼓童感の向上も感じやすいものだ。この新しいエンジンは非常にコントロールしやすくトルキーで、信号でも簡単にウィリーを決めることができる。
キャバレロはやはりライディングの楽しさにあふれていて、もうそれは何物にも代えがたいレベルといっていいほどだ。サスペンションも大いに進化しており、フロントフォークはハードブレーキングでも激しくボトムすることが無くなった。これまで以上にプログレッシブな挙動が前後ともに与えられているように感じられるのだ。シフトフィールは非常によく簡単かつ確実。オフロード向けにショートなギア比が用意された1速のため、2速からの発信は豊かなトルクもあって非常にやりやすい。エンジンはスムースに回転が上がり、レブ・リミットまで振動もないままに吹け上り、その間トルクやパワーの谷は感じられない。おかげで100㎞/hちょっとくらいの走行は文字通り快適そのものだ。不足があるとしたら小さなウインドスクリーンくらいで、それさえ手にすればRally500は本格的なアドベンチャーモデルといっていい仕上がりになるだろう。軽いオフロードを含む試乗コースでは、キャバレロ500のハンドリングや操作性は特筆すべき素晴らしさといえるだろう。何よりも150㎏という軽量さはキャバレロのキャラクターを決定づけており、しかも旧型から重量が増えていないのに装備はより豪華になっているのだから。ファンティックのエンジニアは、新型のためにボディ・コンポーネンツの一つ一つを最適化することに十分に気を使った設計を行ったものと思われる。エンジンとスロットル・ボディの合計重量はわずか42㎏に過ぎないのだ。このスペックを聞いただけでも、マラソン・アドベンチャーツアーの一員に加わったとしてもキャバレロ・ラリーが飽きることなく楽しいパートナーでいてくれることが容易に想像できるというものだ。
キャバレロ・スクランブラー500は、ストリートを走行する一般的なライダーにとってはさらに魅力的なマシンといっていい。サスペンション・トラベルは前後ともに150㎜に抑えられるが、シート高も820㎜と低く、快適なツーリングが楽しめることは間違いないだろう。
| Caballero500 Scrambler
結論
新型ファンティック・キャバレロ・シリーズはラリー、スクランブラーとデラックスの3機種が用意されている。

| Caballero500 Rally / | Caballero500 Scrambler / | Caballero500 Scrambler DEULUXE
その最大の魅力はやはり新型のエンジンによるところが大きい。全体のパフォーマンスは明らかに向上しており、世界中のどのシングル・エンジン・オールラウンダーと比べても間違いなくトップレベルに位置づけられるマシンに仕上がっている。マシン全体のエルゴノミクスは向上し、品質も大いに向上した。旧モデルにあった、しかし些細な、と言っていい問題点はもはや新型では見られない。そう、キャバレロ500は今や成熟したモーターサイクルなのだ。ストリートを多く走るなら選択はスクランブラーで間違いないだろうし、オフロードを好んで走るライダーにはラリーがうってつけである。
テクニカル・データ
車両価格(消費税10%込)
| Caballero500 Rally:1,400,000円
| Caballero500 Scrambler:1,290,000円
| Caballero500 Scrambler DEULUXE:1,340,000円
最高出力:44hp/8,000rpm
最大トルク:42Nm/7,000rpm
エンジン:水冷4サイクル単気筒DOHC4バルブ
ボアxストローク:96×64(mm)
排気量:463cc
圧縮比:12.5:1
吸気径(インテークマニフォールド):46mm
エキゾースト:EU5+排気システム
クラッチ:湿式多板クラッチ+アンチホッピング機構付き
ミッション:常時噛合式6速トランスミッション、二次減速はチェーン
シャーシ:クロモリ鋼製チューブラー・フレーム
フロントサスペンション:倒立式テレスコピック式フォークφ41mm(ラリーφ43mm)
スプリング・トラベル:150mm(ラリー200mm)
リアショックユニット:フルアジャスタブル150mm(ラリー200mm)
ホイール:スポークホイール
フロントタイヤ:110/80R19(ラリー90/90R21)チューブタイヤ
リアタイヤ:140/80R17チューブタイヤ
フロントブレーキ:φ320mmシングルディスクブレーキ+4ピストンラジアルキャリパー
リアブレーキ:φ230㎜フローティングディスク+シングルピストンキャリパー
ホイールベース:1426mm(ラリー1455mm)
ステリングヘッドアングル:24.5度、トレール118mm(ラリー113mm)
シート高:820mm(ラリー860mm)
燃料タンク容量:12L
ガソリン抜き重量:150kg
基本装備:電子制御スロットル(ライドバイワイヤー)、3.5インチTFTディスプレイ、2種のライディングモード、キャンセル可能ABS、LEDの灯火類。
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