ファンティックが現在の体制になって躍進を遂げてきたのを支えてきたのが、マリアーノとマウリツィオのロマーン兄弟だ。昨年、マリアーノはファンティックのCEOを退任し、レーシング部門の総監督と、長年にわたる業界への貢献と人脈を用いたイタリア工業会の会長職やEICMAの会長職を兼任しつつ、経営の第一線からは一歩引く形となった。
その兄のマウリツィオはマリアーノが築き上げてきたファンティックの栄華を確かなものとすべく登板したのだ。彼もまた、モーターサイクル業界を深く知り、ファンティックの再生を支えてきた仕事人でもある。モータリストではファンティック取り扱い開始以来のロマーン兄弟との深い縁から、新たなる一歩を踏み出すファンティックをこれから支えていく仕掛け人、マウリツィオ・ロマーンにインタビューを敢行した。

Maurizio Roman
マウリツィオ=ロマーンは1953年生まれ。弟のマリアーノ(1955年生まれ)とともに、イタリアのモーターサイクル業界の光芒に深くかかわってきた。マウリツィオはアプリリアの代表取締役を長く勤めていたが、その後ファンティックに昨年入社するまで、ベレッタ、テクノジム、サフィーロ、アルパインスターズでCEOを務めてきたのだ。弟のマリアーノはアプリリアで商品開発のトップを長年務めてきており、その後も多くのイタリアン・ブランドで商品の技術開発にかかわってきていた。2014年にファンティックが再生したとき、投資家グループとともに、マリアーノはファンティックのけん引役となって会社を支え、そこにマウリツィオが続く形となったのである。
モータリスト:マウリツィオ、あなたがモーターサイクル業界に戻ろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
マウリツィオ:ファンティックは、私の弟のイニシアチブもあって見事に再生しました。そんな中、2019年にはオフロード・レースにも参戦するようになったのです。以来、私たちは40ものインターナショナル・タイトルをモトクロスとエンデューロで獲得してきました。

| FANTIC RACING XE300 / | FANTIC RACING XXF450
今ではファンティックは2サイクルと4サイクルの双方に競合力の高いラインアップを持ち、一昨年には電子制御燃料噴射(EFI)を装備した2サイクルエンジンを搭載する競技モデル、XE300をラインアップに加えたのです。こうした競技志向のラインアップはもちろん、私たちには「キャバレロ」シリーズがあります。市場では最も格好の良いバイクとして認知され、125、500、700の3種のエンジンを持つラインアップが幅広い層に高く評価されています。

| Caballero Scrambler125 / | Caballero Scrambler500 DELUXE / | Caballero Scrambler700 TRAVEL
私たちはさらに新商品への投資を続けています。2つのニューモデル、ステルスとイモラは、我々の誇る125㏄4サイクルエンジンを搭載するほか、ファンティックのグループ会社であるミナレッリが開発した新型のMM460エンジンを搭載して近く登場する予定です。
| MM125エンジン搭載のSTEALTH125 / | MM460エンジン搭載のSTEALTH500
ここ数年では、自転車も非常に重要な商品で、売り上げの35%をも占めていました。主にCOVID関連と、それに続く市場の大きな変化から、自転車市場の急激な縮小に現在では直面しています。こうした中、事業のリストラクチャリングが必要になり、私が呼ばれたんです。もちろん、二つ返事で引き受けましたよ。
モータリスト:このプランの重要なところはどこにあるのでしょう?
マウリツィオ:去年、ファンティックは16,000台の車両を出荷し、1億2千万ユーロの売り上げを得ています。わずか400人の従業員の力によって。ファンティックの再生に課せられた課題は、2028年を目標に、35,000台の車両を製造し、2億4千万ユーロの売り上げを達成すること。この目標に向け、我々はまず自社の商品の強みと弱みを徹底的に分析しました。もちろん、我々自身の製造、あるいは販売にかかわるプロセスや、構造についても掘り下げたのです。ここで改めて明確になったことは、私たちの商品は十分に魅力的で、競合力がある、ということでした。技術的にも十分以上の競争力があります。一方で、開発期間は大幅に短縮すべきでしょう。さらに加えて、販売構造については見直す必要があり、改善の余地が大きいことは間違いありません。去年、私たちの株主はこの計画を進めるにあたり、3千万ユーロの投資を実施しました。この先、私たちはモーターサイクルと自転車のビジネスの比率を80:20とし、特にモーターサイクルの商品レンジの拡張と、新型エンジンへの投資を行うべきと考えています。
モータリスト:2021年にヤマハから買収した、ボローニャのモトーリ・ミナレッリは現状、どんな状態なのでしょうか?
マウリツィオ:去年、ミナレッリは4万基のエンジンを生産しました。このうち2.2万基は我々以外のメーカー向けに作られたものです。例えばベスト・セラーの125㏄4サイクルVVAエンジンは12千基が製造され、多くのメーカーの心臓部に採用されていますし、50㏄2サイクルエンジンはEuro-5+の認証を取得しています。そう、我々ファンティックは小排気量2サイクルエンジンのマーケット・リーダーであり、新しい環境規制に適合させるために革新的な技術開発を行っているのです。おかげで、今や50㏄のエキゾースト・システムの価格は、エンジン単体の価格よりも高いくらいなんですよ!
上の写真:MM125(125cc4ストローク可変バルブ) | 下の写真:AM6(50cc2ストローク)
モータリスト:そして、ついにモトーリ・ミナレッリ自身が開発したMM460エンジンが市場に投入されました。
マウリツィオ:ファンティック・キャバレロ500は私たちにとって最も成功したモデルでもあります。ただ、市場にイモラ、ステルスの両モデルを投入することが控えるタイミングですから、今こそがキャバレロ500も刷新し、新しいエンジンを用意すべきタイミングだ、と考えたのです。
| Caballero Rally 500 / | STEALTH 500 / MM460エンジン
2本のオーバーヘッド・カムシャフトを備えることで大幅にトルクとパワーを稼ぎ出した新型エンジンは、文字通りの「イタリアン・ハート」(イタリアの心臓)であり、すべてがモトーリ=ミナレッリ社内で製造されるのです。
モータリスト:小排気量のセグメントでは、驚異的な低価格で攻め込む中国勢と戦うのはむつかしいように見えます。ここでの戦略を聞かせてください。
マウリツィオ:レースへの情熱と、ファンティックが持つレーシング・イメージとが、我々を他のメーカーとは決定的に違う存在であることを際立たせるはずです。これは将来にわたっても有効でしょう。我々はロードレース世界選手権Moto2をはじめ、モトクロスやエンデューロの世界選手権に参戦しています。現在では、16名ものライダーを契約で抱えているんですよ!こうしたカッコよさとファンティックらしいスタイルは、キャバレロ・ブランドを今後も強くサポートしていくはずです。
モータリスト:昨年来のKTMの財政難の影響は受けましたか?
マウリツィオ:KTMの財政危機は多くのサプライヤーをパニックにさせました。連鎖的に財政難に陥ったり、中には倒産したサプライヤーもいます。これまでは支払タームは納品後90日程度だった付き合いが、KTMショック以降は商品出荷のタイミングでの支払いに変更されたりしています。非常に厳しい状況です。
モータリスト:競技車両ではヤマハのプラットフォームを使ってきましたよね。今後もこの関係は続くのでしょうか?
マウリツィオ:現状、この協業関係には非常に満足しています。事実、ヤマハは開発中に我々からも現場の情報を仕入れることで商品の改善が進む、と高く評価しているんです。したがって、今後も当面はこうしたビジネスモデルを継続する予定です。ヤマハはファンティックに最新の技術や商品を提供していく、これが紳士協定です。我々は4機種のモトクロスモデル、5機種のエンデューロモデルで大いに成功を収めてきました。
【FANTIC RACING Motocross Model】
【FANTIC RACING Enduro Model】
また、ヤマハは私たちにCP2エンジンの供給を継続し、これは引き続きキャバレロ700に搭載され、今ではEuro5+の認証を取得しています。
| Caballero Scrambler700
MOTORISTS Official account
最新情報はモータリストFacebookをはじめとする各SNSで随時発信中!