Photo:Eri Ito
世界選手権ロードレースMoto2を戦うアロン=カネット選手に引き続き、今年からファンティック・レーシング・リノ=ソネゴのチームメンバーに加わった、バリー=バルタスの単独インタビューをお届けします。
インタビュアーはgp-journal.comの伊藤英里さんです。
Q:今シーズンここまでの成績は、昨シーズンよりもいいですね。その一番大きな理由は何だと思いますか?
A:4年間同じチームにいたので、何かを変える必要がありました。そして今の新しいチーム、新しい「ファミリー」に来たことが、本当に良かったと思っています。
最初のテストからかなりいいペースでしたし、シーズン序盤も手応えを持って走れていました。いいポジションで戦えていたし、ヨーロッパラウンドに入ってから初めて表彰台に上がることができて、それ以降はコンスタントに表彰台争いができています。すごくいい感触ですね。
今後もこの調子で続けていきたいですね。1レース、1レースに集中して、木曜日に準備を始めて、日曜日に結果を見る。その積み重ねです。でも僕がよく言うように、仮に今週末6位や7位で終わったとしても、それは十分にいい結果なんです。だから自分たちにプレッシャーはかけません。やるべきことをやって、週末の終わりにどういう結果になるのか、というだけです。
Q:スペインのヘレスで表彰台に上がったときは、率直に、どんな風に感じましたか?
A:やっぱり、すごく嬉しかったですね。ヘレスは特別なサーキットですから。ヘレスは、プレシーズンテストやシーズン後のテストなど、みんなが本当によく知っているサーキットなんです。いつもテストと言えばヘレスなので、そんな場所で表彰台に上がれたのは気持ちよかったです。
でも、表彰台って回を重ねるごとに、感情の高ぶりは少なくなっていくんですよね。
最初の表彰台はものすごく感動しました。でも最近では、アラゴンのときは13周もの間リードして3位だったので、正直感情的にはそこまでではありませんでした。
あとはもう「優勝」だけが足りないんです。そのために取り組んでいるところなので、今週末が終わったあとにどうなっているか、楽しみにしています。
Q:Moto3を1年だけ戦い、すぐにMoto2にステップアップしましたね。何が最も難しかったですか?
A:僕にとっては、Moto3の方がMoto2よりも難しかったですね。というのも、僕の体格と体重(178㎝、69㎏)ではMoto3ではかなり苦労しました。Moto3のときから今と同じ身長・体重だったので、背が高すぎて重すぎたんです。でも、Moto2に乗ったときはすぐに快適さを感じました。
ただ、結果は当初期待していたものではありませんでした。今シーズンでやっと表彰台に上がれたことで、ようやく自分が思い描いていた結果を出せたと思っています。
Moto2での手応えは良いので、次のステップはMotoGPですね。
Q:Moto2クラスでは、すべてのライダーが同じトライアンフ製エンジンを使っていますよね。つまりイコールコンディションだと思いますが、他のライダーと戦うのは難しいですか?
A:本当に難しいですよ。おっしゃる通り、全員が同じエンジンを使っていますし、フレームも3種類しかありません。だから、ほんのわずかな違いが結果を左右するんです。
でも、僕はこの「細かい部分の作り込み」において、最高のチームの一つにいると思っています。Moto2というクラスは、まさに細部の勝負です。20人以上のライダーが1秒以内にひしめくような世界ですから――本当にクレイジーですよ。だからこそ細部が全てなんです。
今はチームともいい取り組みができていて、いい結果にもつながっています。
Q:昨年は鈴鹿8耐に出場されましたが、なぜ鈴鹿8耐という耐久レースに出場しようと思ったのですか?
A:昨年鈴鹿8耐に出場したのは、自分にとって非常に厳しいシーズンだったからです。メンタル的にも、プライベートな面でも、とても大変なシーズンでした。このレースに出たのは、Moto2のパドックから一度離れて、違う世界を見るためでもありました。プレッシャーも少なくて、結果に対する大きな期待もなかったので、純粋に楽しめましたね。
すごくいいレースでしたし、イベントとしても素晴らしかったです。正直、それまではこのイベントのことをあまり知らなかったんですが、実際に走ってみて本当にいい経験になりました。とにかくハードで、特にフィジカル面が厳しかったです。暑さもすごいし、レース時間も長い。でも、鈴鹿サーキットは本当に素晴らしいコースですし、日本のチームで走れたのも、とてもいい経験になりました。
Q:鈴鹿サーキットのレイアウトについて、どう感じましたか? 難しいと思いましたか?
A:初めて鈴鹿を走ったとき、「なんでMotoGPはもうここに来ないんだろう?」と思いましたよ。
もちろん、ベストとは言わないですけどね……、僕はベルギーに住んでいるので、スパ(・フランコルシャン)があります。僕が最も美しいと思うサーキットです。でも、鈴鹿はそれに次ぐくらい美しくて、しかもすごくテクニカルで難しいんです。
ただ……暑すぎますね! でも本当に楽しかったです。
Q:MotoGPのスプリントレースと比べて、8耐はどれくらい厳しいのか、あるいは楽なのか、具体的に教えてもらえますか?
A:全く別物ですね。24時間の耐久レースについては、僕はまだ出たことがないのでわかりません。でも、8耐はMotoGPのレースのような感じでしたよ。
1回のスティントがレースそのもので、毎周プッシュしなければいけません。鈴鹿では、まさにそんな感覚でした。耐久レースのライダーたちも「鈴鹿は特別だ」と言っていました。なぜなら、鈴鹿ではどのスティントでも(スプリント)レースのように全力で走る必要があるからです。
24時間レースでは、もう少しペースを調整したり、マネジメントできる部分もあると思います。でも鈴鹿ではそれができません。とにかく、毎周プッシュし続けなければならないんです。
Q:どんな日本食が好きでした?
A:日本食はそんなに得意じゃないんです……。
でも、日本の文化は本当に好きだし、日本の人たちもとても好きです。
Q:鈴鹿8耐への出場経験は、今シーズンのパフォーマンスにおいて何か役立っていますか?
A:昨年は気分を切り替えるために、そして別のバイクで楽しむために出場しただけです。
だから、今シーズンに直接つながるようなことは特にないです。
Q:どのようにして気持ちを切り替えたのですか?
メンタル面では、どう変わったのでしょうか?
A:やっぱり、結果がよくなると、メンタルも自然とよくなると思います。
今シーズンは(これまでとは)違うメンタルコーチと一緒に取り組んでいるんですが、彼が本当によくサポートしてくれていて、すごくいい流れができています。
まるでスパイラルのようで、調子がいいときは、そのいい状態をできるだけ長く保つことが大事なんです。
Q:今シーズン、Fanticレーシングに移籍しましたが、なぜFanticレーシングと契約することを決めたのですか?
A:Moto2の中で、Fanticはトップクラスのチームの一つだと思っています。毎週のように表彰台を狙えるチームは2〜3チームで、その中の一つがFanticだと感じたんです。
実際、僕もほとんど毎週表彰台に上がれているので、このチームと一緒に続けていきたいと思っています。
Q:Fanticはどんなチームですか?教えてください。
A:初日から、まるで大家族のようなチームだと感じました。本当にみんなフレンドリーです。でも、それだけじゃなくて、やるべき仕事はしっかりやっている。それが一番大事ですよね。
前のチームも雰囲気はよかったんですが、日曜日に結果が出なかった。結果こそが重要なので、今は、いい仕事ができているし、いい方向に進んでいると実感しています。
Q:Fanticはイタリアのチームだけど、イタリア語を勉強していますか?
A:悪い言葉だけね(笑)。
Q:レースやバイク以外で、好きなことは何ですか? 趣味はありますか?
A:僕は運動するのがすごく好きです。たくさんトレーニングしています。もしライダーになっていなかったら、走って自転車をこいで泳ぐ、トライアスロン選手になっていたと思います。
Q:ゼッケンに7を使っている理由は?
A:長くなる話なんですが、簡単に言うと、父が元WGPライダーのバリー・シーンの大ファンだったんです。それで僕の名前が“バリー”になり、ゼッケンも7になりました。初めてバイクに乗ったときからずっと7を使っていて、以来、変えていません。
Q:チームメイトのアロン・カネット選手は、あなたにとってどういう存在ですか?
A:チームメイトだと思っています。でも、彼の存在は助けになりますよ。データを共有できますからね。速いチームメイトがいると、比較できるラップタイムがあるというのは、いい状況ですよね。
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